カリナ・エプスタイン整備主任伍長と言えば、機関内の整備士及びパイロットで知らない人間はいない。その整備の腕でもさることながら、何だか色々と伝説の持ち主でもある。
「機体壊して返ってきたトリオGに説教三時間垂れた、とか」
「あー……実話、完璧実話」
「新しい装甲の予算が下りない、つって司令部に殴りこみかけたとか」
「あー……やりかねないなー……」
「入ったばっかの新人パイロットに「おばさん」って呼ばれて張り倒したとか」
「……ぐーだったと思ったけどなー……」
整備に不向きと思しき赤茶のカーリーヘアとサファイアブルーの瞳の、今現在「美人だが年増」の彼女の最強の伝説と言えば、これである。
「ガベル中尉に振られてハンガーでぶち切れて絶叫したとか」
「あたしと結婚しないなんて、一生後悔するわよ、とか何とか……」
まあまことしやかに伝説があったりするのだが、てか九分九厘実話だったりするのだが、そんな「アル激ラヴ」のカリナも、腹に据えかねた事件があった。「カリナさんガベル中尉を振る」事件である。というか、
「アルったら酷いのよ?マチルダを養女にするのに独身だと色々都合が悪いから、お前の籍俺んとこに入れさせてくれ、なんて言うのよ?」
……確かに酷い男だと思うなー、で、なんでカリナさん、未だにそんな男が好きなの?
「だってアルって、あんな風だけど本当は優しいんだもの。私のお肌のことまで心配してくれて」
……それは単に嫌味なのでわー……。
「それにすごく可愛いんだもの。見た目も、ちょっとごつくなっちゃったけど、ハンサムだと思わない?」
……乱視?
「頭もいいし気もきくし、乱暴で大雑把に見えて実は繊細で部下思いだし……お肌のことだって嫌味じゃないのよ?貫徹したりすると「ちゃんと寝ろ」って叱ってくれるし」
いやだから、多分それ嫌味……。
「確かにいやなことも言うわよ?でもアルは絶対、私のこと嫌いにならないわよ」
……その確信は一体どこから……。
「だって私達、愛し合ってるんですもの」
……ノロケかい。
まあそんなわけでカリナ・エプスタインという人は凄腕の整備士でエンジニアで新型開発なんかにも借り出されてて有能なんですけど、何をおいても「アル激ラヴ」なのでありました。いや……私この人すごく好きよ……自分が男だったらこんな人に告られても、どんなに美人で料理美味くてナイスバディーで優しくしてくれて甘やかしてくれても、嫁になんか絶対貰わない、つーか怖くてもらえないけどー……精神衛生上良くないよこんな嫁……アル、なんでこんなのと付き合ってるって言うか切れないんだ……信じらんないぞ、その神経が……繊細なの?鈍感なの?(汗)
「馬鹿言え、あいつの相手が出来るような男なんて、宇宙中探したって俺くらいしかいないだろうが」
「いやーん、アルってばアルってば!!それってプロポーズ?」
……すんません、やってて下さい。付き合いきれません。
続(何)
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